建物振動シミュレーション班
代表 / 生産技術研究所・腰原教授
建築物の耐震性能評価においては、個々の建物について、これまで実地震における被害調査、Eディフェンスをはじめとする実大振動台実験をもとに、解析モデルを用いた振動解析によりその再現が試みられてきました。
こうした研究の積み重ねから個々の建物に対しては、対象建物に応じた構造要素の抽出とその性能を適切にモデル化を行い観測地震波を用いることにより地震時の挙動を再現することが可能になってきました。一方、都市モデルを考える場合には、構造材料、構造形式、規模の異なる多種多様な建物を対象とする必要があり、入力地震動も地形、地盤構成を含めた面的な広がりを考慮する必要があります。
そこで、本プロジェクトでは、2km四方程度の都市モデルを想定し、そのエリアの地盤情報(地盤構成、増幅率など)、地震観測網などの既存データの収集と、エリア内の建物情報の収集を試みています。
地盤情報、地震観測データからは、想定する地震に対する地震動の広がりを推定することが可能であり、個々の建物の建設地における地震動を特定することが可能となります。この想定地震をもとに、建物情報から作成した建物モデルの振動解析により、個々の建物の地震時の挙動を推定するとともに面的な広がりをもった地震時の挙動を推定することが可能になります。
個々の建物モデルの精度と対象建物の戸数は、計算機の処理能力に左右されることになります。個々の建物に対して、損傷状況、損傷部位まで明らかにする詳細モデルを用いたシミュレーションから、おおまかな被災状況(全壊、半壊、一部損、無被害)を把握する簡略モデルによるシミュレーションといったモデル化の手法と推定結果、解析時間などを整理することにより目的に応じた組合せを選択することが可能になります。
また、地図上での被害状況把握、最大加速度、最大変形などの各応答値のデータベース化、建物振動シミュレーションの動画表示などシミュレーション結果の可視化により、専門家に対しては各シミュレーションの精度比較、信頼性評価を可能とするともに、一般の住民の方々にとっても合意形成のための意識共有に有用なものとなることを期待しています。