合意形成システム班
代表 / 先端科学技術研究センター・小泉教授
自然災害の不確実性は、いつどこで発生しどのような被害を生じさせるかが不明な点に起因する。本プロジェクトが目指すハザードと建物別被害の可視化が実現できれば、事前・事後対応の精緻化や資源の優先投資の決定など、意思決定における重要な情報提供が可能になります。しかしながら、膨大な情報からどの情報を抽出し意思決定を行うのか、または複数のシナリオから何を優先させて決定を下すのかは状況に大きく依存します。
そのため、合意形成システム班では、可視化されたデジタルシティ・プラットフォームを誰がどのように使用・活用するかを明らかにする出口戦略に位置づけられ(図1)、今後の事前都市防災やクライシスマネジメント(発災後の応急対応)、リスクコミュニケーションに資する主体間の合意形成プロセス、合意形成手法、並びに合計形成構造について研究を進めています。
具体例として、ワークショップは住民レベルや基礎自治体レベルでの合意形成手法として注目を集めています。ワークショップは一般的に、①地域課題の解決と②ツール・指標開発③専門家らによる価値探索型に分類され、それぞれの目的や対象者、アウトプットも異なります。①地域課題の解決では被災地の復興に資する協議会方式の復興まちづくりや、津波で流された街の保存・継承に資する情報収集、行政職員向けの危機管理能力向上を企図した取り組みなどが既往研究でも紹介されています。一方、②ツール・指標開発ではゲームの効果測定、新技術の実装課題など実務的な意味合いが強く、実装に向けた準備段階において用いられます。最後に、③の専門家らによる価値探索型ワークショップでは、プロジェクトの萌芽的な段階において専門家との対話を通じてツールの独創性の抽出や有用性を最大限引き出す取り組みと言えます。
現在、合意形成システム班では、本プロジェクトの独創性と有用性を明らかにするため、③の専門家らによる価値探索型ワークショップ準備を進めています。特に自然災害リスクの可視化と脆弱性評価、並びにその事前対応策の策定において議論が進んでいる米国との専門家対話を通じ、本プロジェクトが持つ独創性の抽出を進めています。
将来的な展望として、同プロジェクトによって、事前防災として耐震評価と仮想地震による倒壊家屋シミュレーションに基づく耐震補強推進や、クライシスマネジメントにおける優先配備先決定支援、IoTセンサーに基づく築年数に応じた耐震性能評価並びに地震保険料率の決定など、今後の更なる研究・実装への飛躍が見込まれます。そのため合意形成システム班では、社会側の将来的なニーズ把握及び将来の研究シーズの模索も進めています。